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市長の手控え帖 No.34「現場の強さ」

市長の手控え帖

 

夏を迎えました。あの震災から四か月たとうとしていますが、いまだ原発災害は収まる気配が見えません。フクシマは、原発の悲劇の象徴として歴史に刻み込まれそうです。さて、時の経過とともに色々なことが見えてきました。そのひとつに現場の強さがあります。惨禍の中、冷静さを保ち、苦しみに耐えている日本人への称賛の声が聞かれます。また、救助の現場での自衛隊・警察・消防の働き。使命感に満ち、秩序だった機敏な仕事ぶりには誰しもが共感しました。消防団は地域の宝、安心と信頼の象徴です。同様に自衛隊・警察は国を守り、地域を支える砦。特に自衛隊はその生い立ちは不幸でしたが、今や国民の信を得た正統な防衛組織です。この国会で思わず“暴力装置”と言い放った偉い政治家がいました。場を取り違えた妄言だと気づいているでしょうか。    震災で、東北は重要部品の一大供給地だったことが分かりました。ハイレベルなものづくり、その根っ子は工場にあります。被災後、いくつかの工場を歩き激励してきましたが、修復に向けた従業員の目の輝き、士気の高さに感動しました。再開に精魂を傾け、ラインが動き出す瞬間、手を叩き喜びあう。一旦目標が決まれば、互いの配慮と分業が驚異的な協働の効果を生む。農耕の民、日本人のものづくりの強さは生産現場にあると思いました。   そして、自治の現場での公務員の働きです。行政は縁の下の力持ち。今度の災害ではそれぞれの立場で精一杯努めたと思います。土砂崩れへ重機を回す、漏れをふさぎ水を通す、道路の点検と応急措置、避難者への生活支援、あふれ出るごみの収集運搬に汗をかきました。宮城県南三陸町の女性職員は、拡声器で津波の襲来を町民に知らせるさなか流されました。大槌町では町長を含め32人が犠牲になり、人員不足で苦労しています。双葉地方でも避難者支援に忙殺、過労で倒れる職員が相次いだとのこと。役所でも最小の経費で最大の効果をあげるのはあたりまえ。と言っても、頭数を減らせば済む話ではありません。市民生活を支えるには、意欲と実行力のある公務員を一定数確保することが必要だと思います。

 一方、中央の働きはどうでしょう。広域な大災害では、交通・エネルギー・物資の確保が極めて大事で、これは国の責務。ところが道路・港の復旧や住宅整備のスピードは遅い。原発避難指示の杜撰さに至っては怒りすら覚えます。飯館村の値が高いことは当初から分かっていた筈なのに、40日もたった時点で「計画的避難」に指定。国に見捨てられたと言われても仕方ない。備蓄量は十分あった中でのガソリン不足。道路・鉄道の寸断はあったにせよあまりにも長い混乱。石油連盟に要請しているのでもうしばらく・・・。何かおかしい。国としては、「要請」ではなく「強制」的に供給させるべきでした。普段、権力は抑制すべきもの。しかし、非常時には対象を定め、積極的に行使すべきもの。また、通常の手続きを省いてでも今必要なものを、必要な地域に揃え、迅速に対応できる態勢を整えることが先決です。
まちの成り立ちや地形が異なるように、災害のありさまも違います。不安におびえる住民の顔と息づかいが見えるところでしか、きめ細かい対応はできません。要は地方に任せることです。格闘している現場と間延びした中央のズレは何としたことか。私の知る官僚は皆優秀、国を背負う誇りを持っていた。しかし、政府という組織になるとこうも機能しないのは何故なのか。「大男総身に知恵が回りかね」です。
東京電力も情けないほどの無能ぶりをさらしました。現場では命懸けで放射能防止と闘っているのに。本社幹部の切迫感のなさと無責任ぶりにはあきれます。三菱や東芝を下請けにすえるほどの超一流会社の実態がこんなものだったとは。

この災害で、大きいもの権威や信頼が崩れ、タテの流れもうまく働かないことが分かりました。一方、自治体のヨコのつながりには助けられました。行田・桑名・沼田・渋川、山口・防府・下関・萩、大垣・瀬戸市の市長と電話でやりとり。すぐに水・毛布・食料品が届き、応援の職員も派遣されてきました。前横浜市長が自ら運転し粉ミルクを持参、隣りの那須町長から貴重な軽油を融通して戴きました。困難にたじろいでいる時の折の救いの手はありがたいものです。東京政府は近くても遠い・大きくても小さい。地方政府は遠くても近い・小さくても大きい。タテからヨコへ、集中から分散へ。時代の変わり目を予感します。

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