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市長の手控え帖 No.36「図書館はオアシス」

市長の手控え帖


震災で気分の晴れない中、新図書館のオープンは明るい話題となっています。知識を求め、問題を解決するために本を探し、資料を調べる、というのが図書館の本来の役割です。一方で、図書館は単に本を保管し貸し出す「お役所」で、利用者は一部の本好きな人や学生。重々しい建物、せき払いもはばかる静寂の空間、との堅いイメージがありました。しかし今、図書館は大きく変わっています。
まず、本を読みに来るだけの場所ではないことです。人は誰でも心安らぐ「居場所」を持っています。お城や川端、喫茶店や居酒屋のような、ぼーっとしたり、居眠りしたりできる場。そうした居場所のひとつになれないものか。あるいは、悩みを抱えたり、進路を決めかねているとき、ふらりと寄って、深呼吸できるような空間になれないかと思っています。アメリカでは「自殺したくなったら図書館へ行こう」がスローガンになっています。図書館は「生きていく力」を受け取る場所です。どうか心のオアシスの場として利用してください。
もうひとつは、より良く生き、より考えるための場所になることです。知識や教養は、人として心豊かに生きるうえでの栄養剤。同時に人との関わりの中で暮らす私たちには、社会貢献や地域活動をするうえで欠かせない。図書館は生きた知、を求める交差点になります。元気で長寿を保つには、健康管理が大事。治療から予防へ、食生活・運動・ストレス解消に役立つ本を見つける。学習会なども行われる交流の場になります。
歴史・文化を見直す。幕末「白河口の戦い」は長岡と並ぶ戊辰の関ヶ原。ここで敗れ、薩長の世となる歴史的意義を持つ。しかも明治政府の大立者や、名のある新撰組隊士らが対峙したこと。萩市に今も伝わる盆の「白河踊り」は、この戦いに由来すること。このように白河をめぐる歴史の掘り起こしや、再評価の研究交流の場になります。さらに図書館を舞台に新しく事業を起こしたり、経営を支援することも珍しくなくなり、志を持つ人たちのサロンの場となったりします。

そして特に大切なことは、民主主義を支え、地域づくりを行う拠点になることです。政治が混迷する中、外交は経済は年金は大丈夫か。市の財政は、道路や学校の整備は、議会の動きはどうなっているのか。情報は新聞・テレビ、広報紙で茶の間に入ってはいても、肝心なことは伝わらないことが多い。「国や市で言っていることは本当か、裏付けはあるのか」を客観的に分かる資料・情報を揃えておく場所が必要。それは図書館だと思います。自らの頭と手足で確認したうえで、政策に同意したり批判したりすること。これが民主主義や自治には欠かせません。図書館は、本の貸し出しのほかに、国や地域の課題を考え、答えを出すための資料・情報を収集し、公開することが大事な使命であると思います。
また、白河の祭りやスポーツ・映画等のイベント、町内会活動、企業情報を提供すること。あるいは、大正・昭和から今日までの街並みや、提灯まつり、南湖の移り変わり。農村の風景や田植え・刈り取り作業の変化等、人の営みや自然を「地域の記憶」として保存することも必要。白河の地に、より深く根を張った活動が求められています。新図書館「りぶらん」が、知の交流や憩いの場となるよう、職員ともども努力してまいりますので、こぞって足をお運びください。

白河出身の川瀬七緒さんが「よろずのことに気をつけよ」で今年の江戸川乱歩賞に輝きました。盆に帰省された折、お会いしました。4年前突然書きたくなったこと。心象風景には白河の緑や小峰城があること。幼な心に見た不思議な祖母の祈祷念仏が作品の下敷きになっていること。また小さい頃、近くにあった図書館からどっさり本を借りて読みふけったそうです。事実、作中にも図書館や小峰城が出てきます。読書と白河の歴史・文化が、溢れ出る才能の源になっているものと思います。次回の長編ものの構想も固まりつつあるとのこと。楽しみです。
将来、新図書館をわが書斎のように活用し、川瀬さんのような作家が白河から生まれることを期待しましょう。

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